• アレクサンダー・テクニークとは
  • 日本アレクサンダー・テクニーク協会とは
  • ワークショップ
  • トレーニングコース
  • ライブラリ
  • 教師紹介
  • 教室紹介
  • お問い合せ

 


 

パトリック・マクドナルドがわれわれに言いたかったこと

 

前々回に引き続き故マクドナルドの第一回ATコングレス(世界大会)での会話の中から私が大切なことだと思ったことを話してみます。太字で書かれているところがワークショップで生徒にハンズオンしながらの彼の言葉です。         

 

アップの推進力

 

脊柱に沿って押し上げるアップを明確に認識できていなければなりません。あなたの体が前や反対側に傾いていようと、膝を曲げていようと、まっすぐであろうと、どんな形になっていても脊柱に沿った上への推進力をつかまえていないといけません。

私は10歳のときからアレクサンダー・テクニークのレッスンを受けています。トレーニングコースに入ったのは1929年のことです。3年間トレーニングコースを受けて修了書をもらった後、かなり長い間、自分ひとりでも他の人たちを相手にワークをしてきました。である日、生徒を椅子に座らせようとする時にダウンさせていることに気づきました。こんなふうに上を目指しているつもりでダウンさせていると気づきました。

そして同期の仲間がこれと同じことをしているのに気付いたのです。これはまずい、これをやってはいけないと思い、それ以来やり方を変えていきました。

それでやりたいことは、上を目指しながら膝を曲げて・・・教師は起こっていることをきちんと見なくてはなりません。生徒の体が下に降りている時にもアップが起こっているかどうかを。これが対hン重要なことなのです。(中略)

普通はまず後ろに傾くわけですが、まず初めにアップしてから後ろに傾きます。前に傾くには、その前にアップします。椅子から立ち上がる時にも、まずアップします。アップしてから椅子に座り、アップしてから立ち上がります。こういうことです。

いつも脊柱に沿ったアップ以外に大切なことはありません。他のことはちゃんとできていますから、ともかく脊柱に沿ってのアップがあれば大丈夫です。なければ困ります。これがあなたの学ぶべきことです。

 

皆が見失っていたこと

 

谷村:この中で彼が強調している“脊柱に沿った上への推進力”ということがどういうものかを話してみたいと思います。
この事の反対の言葉がダウン(落ちる)とかコラプス(崩れる)という言葉です。要するに下方向に向かうことです。下の絵のBCDがそうです。

 

 

このように説明されると多くの人たちは当たり前のことのように感じられるかもしれません。しかしこんな当たり前のことを彼は何度も何度も強調して実践して見せています。これはいったいどういうことなのか? 彼はこの中で皆に何を言いたかったのか? 再度考えてみたいのです。

彼が言っているように、これは当たり前のことだと皆思いながら実はそういう風にはしていないということです。この文章の中で彼も同期のみんなも同じことをしていたのです。それが事実だとすればここで大きな疑問が浮かんできます。つまり皆同じ教師であるFMアレクサンダー自身から直接学んでおきながらこんなことが起きるのだろうか? という疑問です。

この事に関しては私の経験から言って、こういうことはおおいにあることだと思います。アレクサンダーが生徒たちにちゃんと教え、生徒はそのことがちゃんとできていたとしてもそのことをの認識を間違って、あるいは何かの認識を見落としているということはあることなのです。そしてその中でも第一世代の生徒が共通して見失っていたことが、彼が強調して話している“脊柱に沿った上への推進力”ということではないかと私は考えています。そして私自身も20年以上のこのワークの探求の中でこのことの重要性を痛感しています。

 

脊椎に沿って上に向かう力の重要性

 

どうしてこのことがそんなに重要な事かを話してみたいと思います。アレクサンダーは「首を自由にして頭を前に上に、そして背中が上下に長くなり、左右に拡がる。そして足が大地に対抗する」ということを言いました。そして実際にこのことを実現するためには“脊柱に沿った上への推進力”が必要なのです。言い方を変えると、この力をキャッチしなければ「首を自由にして・・・」の一連の内的な活動の方向性を放つことは難しいのです。

この事をわかりやすくするために例え話をしたいと思います。その為にまずタオルを用意してください。そしてそのタオルを簡単に折りたたんでおいてください。そこから両手でそのタオルの先の左右を持ってゆっくり持ち上げてください。タオルは上に上がりながら長くなり左右に拡がります。つまりタオルが上に行かなければ上下左右に拡がる運動は起こらないわけです。

このタオル全体がわれわれのからだの中の背中、あるいは胴体だと考えてください。こう考えると先ほどの絵のBDの人の背中は下方向にタオルが折りたたまれて落ちてゆく姿勢であることがわかります。勿論上方向の推進力は感じません。脊椎に沿ってのアップが起こるためにはその上にある首を自由にして頭が前に上に、の方向性を発見しなくてはなりません。それと同時に上の推進力をもらう為に足が大地に対抗しなければなりません。

 

他の教師たちとの決定的な違い

 

以上のことをマクドナルドは長年の探求の中で発見したのです。もちろんこのことはFM・アレクサンダーも承知していたことだと思います。おそらく彼にとってそれは当然なことでわざわざそのことを言わなくてもそうなると考えてのことだったのだと思います。

しかし実際は生徒にとってはそうではなかったということではないでしょうか? そうではなかったということをマクドナルドが発見したと言えるかもしれません。しかし非常に残念なことですがこのことは同期の人たちには受け入れられなかったようです。FM・アレクサンダーはそんなこと言わなかったという理由だけで。そしてこのことが他の教師たちとの決定的な違いとなってきます。その結果ATの世界にもご多分に漏れず“マクドナルド派”といった派閥というものが出来てきます。

勿論彼としてはもともとそんな派閥なんて作るつもりはなかったでしょう。後世の人たちが勝手にそういうものを作り上げてしまったのでしょう。

そしてそういう風に言う人たちほどマクドナルドが言いたかった“脊柱に沿った上への推進力”の重要性は理解していないようです。しかし私にとっては大変重要なことではないかと思っているのです。とは言うものの私自身この重要性に気づいたのはつい最近ですから偉そうなことは言えません。時間のかかることなのかもしれません。

 

編集後記

 

今回はパトリック・マクドナルドが強調している脊髄に沿って流れている上への推進力について話しましたが、自然界の中に見られるこの上への推進力ってどんなもんがあるだろう? と考えてみました。水の流れとか雨とかの自然物は重量によって上から下へ向かっています。つまり下向きです。

ところが鳥、草木、人間は重力を利用して上への力を生み出していることに気づきました。生き物にはそういう能力が潜在的に備わっているのかもしれません。地球上の生き物だけがそれができるのです。しかもそれがその内側で起こっていることなのですから以前から私が話している内的活動のことかもしれません。

この力はおそらく今のところ医学的には説明は難しいわけですが多くの人の一人一人の経験の中でははっきりと存在し、認識できるものなのです。

 

|

▲このページの先頭へ